論文紹介

サステナビリティの方針は、日々の仕事と意思決定にどうつながるか。
原著の問いと根拠をたどり、研究と実務で確かめたいことを考えます。

本欄では、原著に沿ってCSR(corporate social responsibility/企業の社会的責任)という用語を使います。実務でいうサステナビリティ経営(sustainability management)と重なる議論を、経営や日々の仕事との関わりから紹介します。

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関心のある問いから、二つのまとまりで読み進められます。どの記事からでも、関連する個別解説へ移れます。

社内浸透から戦略の見直しへ

浸透の捉え方、仕事の仕組み、異論、KPIの責任範囲、部門をまたぐ判断を、5本で考えます。

  1. 1 · 約9分社内浸透は、何が変われば進んだと言えるか

    研修の参加率や社員の賛同だけで、社内浸透を判断してよいでしょうか。4本の論文から、個人の受け止め方と職場の実践、組織や社会の変化をつなぐ読み方を考えます。

  2. 2 · 約9分CSRを伝えても、仕事が変わらないのはなぜか

    研修や社内発信を、社員が仕事を変えられる条件へどうつなぐか。6本の論文から、意味づけ、人材育成、管理への統合を読み、実行が進む中で当初の環境目的が狭まる可能性も考えます。

  3. 3 · 約9分社員の異論を、戦略の見直しにつなげるには

    社員の異論を、方針や資源配分の再検討へどうつなぐか。4本の論文から、葛藤、情報、権限に加え、異論と評価が環境対応を深める方向にも狭める方向にも働くことを考えます。

  4. 4 · 約9分KPIの目標と責任は、どう決めれば仕事を支えられるか

    管理できる数字だけを選ぶと、重要な課題が抜け落ちるかもしれません。6本を読み合わせ、全社の成果と部門の役割、評価と支援、高い目標と自律的な動機の関係を考えます。

  5. 5 · 約9分数字を共有しても、部門の判断がそろわないのはなぜか

    同じダッシュボードを見ても、部門ごとに判断が分かれるのはなぜか。6本の事例研究をつなぎ、予測と目標の違い、現場の知識、情報の見せ方、評価と資源配分を考えます。

重要課題から事業・指標・成果へ

重要課題の選定から、循環型の事業づくり、KPIの運用、成果の検証へ進む4本です。

  1. 1 · 約9分重要課題を選んだ後、何を変えるのか

    マテリアリティを特定しても、仕事や意思決定は自動的には変わりません。6本の論文から、誰の課題を選び、誰が評価の前提に参加し、予算・部門の仕事・指標の運用をどうつなぐかを考えます。

  2. 2 · 約9分循環型ビジネスを、試行から事業へ育てるには

    循環型ビジネスを試行から事業へ育てる条件を、6本の論文から考えます。組織能力、部門・企業間の調整、利益配分、長期の採算と計算の範囲をつなぎます。

  3. 3 · 約9分CEのKPIを、現場の判断と改善につなぐには

    KPIを報告しても、次の判断が決まるとは限りません。6本の論文から、測定の時期、部門の役割、戦略マップの共同改訂、評価での使い方をつなぎ、現場の改善につながる条件を考えます。

  4. 4 · 約9分「循環が進んだ」を、どんな証拠で確かめるか

    四つの論文を読み合わせ、CEの開示と実践、効率改善と環境便益の違いを、再使用パソコン事業の仮想例から考えます。

個別の論文解説

43本 / 全43本

社内浸透の捉え方から、仕事の仕組み、戦略の見直し、重要課題、事業づくり、KPI、成果の検証まで。関心のある問いから、個別の論文へ進めます。

Aguinis & Glavas(2013)読了 約8分

社内浸透は、何を仕事に組み込むことか

CSRを知る人が増えても、日々の仕事が変わるとは限らない。事業戦略と普段の仕事の両方にCSRを反映するという視点から、社内浸透の到達点を考える。

理論・概念の整理(conceptual paper)

個人から組織を考える(microfoundations)仕事に感じる意味(work meaningfulness)戦略の実行(strategy implementation)

Gond et al.(2017)読了 約9分

CSRを「人」から読む

268本の研究を整理したレビューから、CSRへの関わり方を読み解く。個人の態度と組織の変化の間に、何が残されているのか。

先行研究の体系的な整理(systematic review)

個人から組織を考える(microfoundations)組織行動論(organizational behavior)出来事の意味を捉える(sensemaking)

Aguinis & Glavas(2019)読了 約10分

CSRは、社員にとってどんな意味を持つか

同じ方針でも、社員が見いだす意義は同じとは限らない。個人の価値観、仕事の進め方、社外との接点から、CSRの経験をどう解釈するかを考える。

理論・概念の整理(conceptual paper)

経験の意味を解釈する(sensemaking)仕事を通じて感じる意義(meaningfulness through work)社員発の取り組み(bottom-up CSR)

Rupp et al.(2018)読了 約10分

CSRは、どんなときに仕事への意欲と結びつくか

673人の調査から、CSRへの認識と仕事への活力・熱意・没頭の関係を読む。自律的に関わる動機の役割と、予想外の結果に目を向ける。

1時点の質問票調査(cross-sectional survey)

自分の意思で関わる動機(self-determination)仕事への活力・熱意・没頭(work engagement)個人の価値観(individualism)

Kim et al.(2017)読了 約10分

環境配慮の行動は、職場でどう広がるか

個人の考え方に加え、上司と同僚の行動はどう関わるか。韓国3社の80職場グループを調べた研究から、行動を評価する人による結果の違いまで読む。

個人と職場集団の分析(multilevel analysis)

自発的な環境配慮行動(voluntary workplace green behavior)同僚への働きかけ(green advocacy)倫理的な振り返り(moral reflectiveness)

Bartosch et al.(2026)読了 約10分

社員の声は、環境戦略を動かせるか

社員が経営判断に参加することは、環境対応にどう関わるか。ドイツ56社の条件の比較と40件のインタビューから、代表者が実際に影響を及ぼす方法を考える。

条件の組み合わせの比較とインタビュー(fsQCA & interviews)

経営判断への従業員の関与(employee voice)企業統治(corporate governance)意思決定の時間軸(time horizon)

Hahn et al.(2024)読了 約10分

CSRへの異論は、関与の弱さを意味するか

方針への異論が、提案や交渉につながる場合と、行き詰まりを生む場合。対立の内容、考え方、日常業務との関係を組み合わせ、社内浸透の条件を考える。

理論・概念の整理(conceptual paper)

社員が経験するCSRとの葛藤(employee–CSR tensions)矛盾と相互依存(paradox)行動できる余地(perceived latitude)

Manzhynski et al.(2025)読了 約10分

矛盾に気づくには、情報を増やすべきか

詳しく伝えても、要点を絞っても、見えなくなる論点がある。状況・情報・認知の関係から、情報を補う、整理する、理解を支えるという三つの対応を読み解く。

理論・概念の整理(conceptual paper)

矛盾への気づき(tension saliency)状況・情報・認知(SIC model)情報の整理と集約(aggregation)

Gond & Moser(2021)読了 約10分

CSRは、個人の意識だけで説明できるか

CSRへの態度を調べる研究と、CSRをつくり変える人々の実践を調べる研究。二つの視点をつなぎ、個人と組織・社会が互いに影響する過程を考える。

二つの研究潮流を比較する理論的論考(critical essay)

心理と社会的実践(psychological and sociological approaches)個人から組織を考える(microfoundations)個人と組織・社会のつながり(micro–macro link)

Feder & Weißenberger(2021)読了 約10分

CSRは、日々の管理の仕組みに入っているか

CSR方針を掲げることと、目標・手順・人材育成に反映することはどう違うか。ドイツ企業のトップ層175人への調査から、管理の仕組みと成果の測り方まで読む。

1時点の質問票調査と構造方程式モデル(cross-sectional survey & SEM)

戦略を実行する管理の仕組み(management control systems)制度と人材・文化(formal and informal controls)先回りして取り組む姿勢(proactiveness)

Podgorodnichenko et al.(2022)読了 約10分

CSRの研究は、人材マネジメントに届いているか

CSRと人材マネジメントをつなぐ知見は、実務にどう紹介されているか。学術147本・実務160本の文献を比較し、共有される期待と、伝わりにくい仕組みや条件を考える。

学術文献と実務文献を比較する統合的レビュー(integrative literature review)

CSRと人材マネジメント(CSR–HRM nexus)研究と実務の隔たり(research–practice gap)条件と仕組み(contexts and mechanisms)

Wang et al.(2025)読了 約10分

マテリアリティは、なぜ対話を生み、対立も生むのか

同じ「重要性」を語っていても、目指す報告や変化は同じとは限らない。約25年間の制度形成と91件のインタビューから、マテリアリティが担う情報・将来像・関係づくりの役割を読む。

歴史的な質的研究(historical qualitative study)

重要性(materiality)立場をつなぐ概念や道具(boundary objects)境界をめぐる働きかけ(boundary work)

Puroila & Mäkelä(2019)読了 約10分

マテリアリティの「重要」は、誰にとって重要なのか

重要課題を点数やマトリクスにまとめるとき、誰の声やどの影響が見えにくくなるのか。44社の報告書の分析から、評価の基準、集計、対話のあり方を問い直す。

報告書の質的内容分析(qualitative content analysis)

重要性の判断(materiality assessment)共通尺度への置き換え(commensuration)異論を残す対話(agonistic dialogue)

Rodrigue et al.(2013)読了 約10分

環境KPIは、誰の声を受けて作られるのか

関係者の要望は、環境戦略を通じて指標に届く場合も、指標に直接届く場合もある。資源産業の一社を調べた研究から、KPIの選定と使い方を、社外・社内との関係の中で読む。

単一企業の質的事例研究(qualitative case study)

関係者の影響(stakeholder influence)環境業績指標(environmental performance indicators)管理の仕組み(levers of control)

Wouters & Wilderom(2008)読了 約10分

現場が使えるKPIは、どう育てるのか

現場参加は、決まった指標への納得を得るためだけではない。飲料企業の物流部門を約3年間追った研究から、仕事の実態を測定に反映し、指標を試しながら育てる過程を読む。

縦断的な現場研究と開発への参加(longitudinal field study)

仕事を助ける制度化(enabling formalization)経験に基づく開発(experience-based development)試行と修正(experimentation)

Jordan & Messner(2012)読了 約10分

KPIが、仕事の助けから足かせに変わるとき

同じ指標の限界を、現場が当初は許容し、その後は強く問題にするのはなぜか。製造業での28か月の観察から、評価の圧力、柔軟な運用、指標の修正を読む。

縦断的な質的事例研究(longitudinal qualitative case study)

仕事を助ける管理(enabling control)指標の不完全さ(incompleteness)評価の圧力(evaluative pressure)

Kapplmüller et al.(2025)読了 約10分

マテリアリティ評価を、仕事の変化につなげるには

二つの重要性を評価する活動は、どこまで経営や日常業務を変えるのか。欧州企業の事例から、関係者の参加や測定・学習と、予算への統合がまだ十分でなかった点を併せて読む。

単一企業の質的事例研究(qualitative case study)

二つの重要性の評価(double materiality assessment)組織の変化(organizational change)見直しを重ねる過程(recursive change)

Bocken et al.(2025)読了 約9分

企業の「循環への取り組み」は、どこまで仕事に広がっているのか

CEを掲げていても、調達、工場、製品設計では進み方が異なります。大企業の上級管理職から得た2,950回答を通じて、取り組みの種類と、開始時期・規模・組織内の広がりを分けて捉える方法を読みます。

大企業の上級管理職から2,950回答を得た国際質問票調査

循環戦略(circular strategies)組織的実装(organizational implementation)指標と評価(measurement)

Santa-Maria et al.(2022)読了 約9分

循環型ビジネスを実行できる組織は、何が違うのか

循環型の事業を始めるには、技術やアイデアを実際の仕事に変える組織の実践が必要です。欧州の既存企業10社から、顧客との対話、部門連携、企業間の役割分担、KPIが事業づくりにどう関わるかを読みます。

既存企業10社・13事例の探索的複数事例研究

組織能力(dynamic capabilities)社内浸透(internal implementation)循環型事業(circular business models)

Das et al.(2022)読了 約10分

CEの環境効果を測っても、なぜ事業の設計が変わらないのか

循環型ビジネスの環境効果を、企業はいつ、どう確かめているのか。29件のインタビューと39件の質問票回答から、測定の知識や結果が設計担当者に届かず、事業の改善に結びつかない問題を考えます。

インタビューと質問票を組み合わせた探索的な質的研究

環境影響評価事業の試行と検証部門間連携

Hansen & Revellio(2020)読了 約10分

回収・修理・再利用は、自社で担うべきか、他社と組むべきか

スマートフォンの4事例から、自社運営、提携、外注、第三者の独自活動を比較。回収や修理の技能・情報・顧客接点を誰が持つかが、事業の広げ方と製品設計への学習にどう関わるかを読みます。

4つの循環サービスの形を比較する質的事例研究

循環の役割分担企業間連携設計への学習

Linder & Williander(2017)読了 約10分

循環型ビジネスは、試行が好評でも、なぜ拡大しにくいのか

電動自転車の月額サービスは、利用者に好評でも拡大が延期されました。再利用後の費用と需要を確かめるまでに時間がかかり、その間も製品への投資が増えるという、循環型事業の検証の難しさを読みます。

理論的な命題の提示と、電動自転車事業の縦断的アクションリサーチ

事業の実験資金負担再利用と再製造

Zink & Geyer(2017)読了 約10分

リサイクルが増えれば、環境負荷は減るのか

再利用やリサイクルによる供給を増やしても、新品の生産が同じだけ減るとは限りません。価格や需要の変化で環境効果が小さくなる仕組みから、循環量のKPIと環境成果の関係を考える理論論文です。

経済学と先行研究を結びつけた理論・概念研究

リバウンド効果新品生産の代替CEの成果評価

Dimitriou et al.(2026)読了 約9分

原単位が改善したとき、本当に循環は進んだのか

旅客一人当たりの環境負荷が下がっても、循環の実践が変わったとは限りません。空港のCE指数を用いた研究から、総量・原単位・相対評価を読み分ける方法を考えます。

欧州13空港・2019~2023年の公開資料による指標構築、パネル回帰、感度分析

原単位の分母CE指標公開データ

Heras-Saizarbitoria, Boiral & Testa(2023)読了 約9分

「循環型」を掲げた報告書から、仕事の変化はどこまで読み取れるか

企業の報告書にCEと書かれていても、何を変えたかは見えにくい。1,370件の報告書分析から、言葉、活動、指標をどう読み分けるかを考えます。

97か国・1,367組織のサステナビリティ報告書1,370件を対象とした質的内容分析

CE開示活動と指標社内浸透

Marrucci, Daddi & Iraldo(2024)読了 約9分

環境目標を部門の仕事と評価につなぐには

環境目標を掲げても、各部門が何を変えるべきかは自動的には決まらない。食品メーカーの指標づくりを追い、全社目標と部門の行動、目標管理と報酬を結びつける設計と、その限界を考える。

イタリアの食品メーカーMuttiにおける1年間のアクションリサーチ。16部門を対象に、2回の聞き取りと社内資料から指標・目標管理制度を共同設計。

環境KPI部門間協働目標管理と報酬

Negri et al.(2026)読了 約9分

循環に取り組んでいる。その成果を、何で確かめているか

廃棄物削減や再生材の利用を始めても、その成果を費用だけで判断していないか。製造業の中小企業12社を調べた研究から、循環の実践と評価指標のつながりを考えます。

イタリアの製造業中小企業12社への半構造化インタビューと公開資料の照合

実践とKPI中小企業社内浸透

Pernagallo, Quatraro & Rubichi(2026)読了 約9分

報告書の文章から、企業のCEへの取り組みを測れるか

イタリアの大企業40社の報告書を、CEの基準文書の語彙と比較する研究。文章の類似度を、企業の実践や環境成果とどう結び付けて読むべきかを考えます。

FTSE MIB構成40社の2017〜2022年の英文非財務報告書のテキスト分析と、企業・年固定効果を用いた回帰分析

テキスト分析CE開示地域の条件

Santolin, Lazzarotti & Urbinati(2026)読了 約9分

CEのKPIを、経営の判断につながる見取り図にする

CEの指標を増やすだけでは、投資や事業の判断にはつながりにくい。産業機械メーカーで作られた循環型バランスト・スコアカードから、コスト削減と顧客価値を通じた収益拡大の道筋、その測定上の限界を読む。

イタリアの産業機械メーカー1社のケース研究。6か月・25回の訪問、経営幹部9名への30時間超のインタビュー、社内外資料から指標と戦略マップを共同検討。

戦略マップCEの事業性KPIの設計

Aureli, Foschi & Paletta(2025)読了 約9分

循環型の包装づくりに、会計はどう関われるか

循環型の製品を開発するとき、従来の会計情報では何が足りないのか。イタリアの6社が包装を共同開発した事例から、現場の情報とLCAが意思決定を支える仕組みと、対話に参加できない人が残る問題を考える。

イタリアの包装開発を担う6社のネットワークを対象とした単一事例研究。開発関係者と各社CFOへの聞き取り、企業資料を照合し、会計情報の使われ方と対話への参加を分析。

企業間協働対話を支える会計LCAと意思決定

Beusch, Frisk, Rosén & Dilla(2022)読了 約9分

サステナビリティを経営管理に統合するとは、何をつなぐことか

財務と環境のKPIを同じ画面に並べれば、経営への統合は進むのか。スウェーデンの工業部品メーカーを追い、情報、責任、ものの見方をつなぐ仕組みと、新事業を育てるために必要な市場の理解を考える。

スウェーデンに本社を置く多国籍工業企業1社の縦断的事例研究。2004~2018年の展開を、2013~2015年の14人・26回の面接と、その前後の調査・資料・追跡面接から検討。

経営管理への統合経営と現場の対話ビジネスモデル

Busco & Quattrone(2015)読了 約9分

戦略マップを、社員が考え直せる道具にする

戦略とKPIを一枚の図にまとめても、仕事の意味は自動的には共有されない。石油・ガス企業でのBSC導入を追い、図を使った問い直し、部門間の交渉、繰り返す会議が戦略を形にする過程を解説する。

中東の大規模石油・ガス企業MEGOC(仮名)での縦断的事例研究。2003年5月~2005年12月と2008年に、49回の聞き取り、社内資料、会議・研修の観察からBSCの利用過程を分析。

戦略マップBSC部門間の対話

Dekker(2004)読了 約9分

企業をまたぐ協働は、信頼と仕組みでどう支えるか

取引先と協力する際には、利益を公平に分けることに加え、互いの仕事をつなぐ仕組みが必要です。鉄道設備の共同開発を追い、契約、会議、原価情報、信頼がそれぞれ何を支えるのかを読み解きます。

オランダの鉄道インフラ管理組織RIBと設備供給企業NMAの戦略的提携を対象とする説明的事例研究。契約締結直前から、両社の担当者への半構造化面接・非公式の対話と契約書・社内資料を照合。

企業間協働利益配分と原価情報信頼と契約

Jørgensen & Messner(2010)読了 約9分

数字で決めきれない新製品開発を、どう前に進めるか

開発の初期には、将来の利益を正確に計算できないことがあります。分析装置メーカーの16か月の調査から、数字を使いながら複数の戦略目標を調整し、具体的な設計判断へ進む過程を読み解きます。

分析装置メーカーの開発・製造部門における16か月のエスノグラフィー。2004年9月~2005年12月の観察、2回の調査で計28件の面接、社内資料を用い、段階の異なる2つの製品開発プロジェクトを重点的に分析。

新製品開発戦略の具体化原価と部門間調整

Wright & Nyberg(2017)読了 約9分

気候変動への強い約束は、なぜ「いつもの経営」に戻るのか

環境目標、専門部署、KPIまで整えた企業でも、取り組みの意味は時間とともに変わる。オーストラリア5社の長期事例から、気候変動への対応が事業の言葉に翻訳され、利益中心の判断へ戻っていく過程を考える。

オーストラリアの電力・ガス、銀行、製造、保険、メディアの5社を対象とする縦断的比較事例研究。70回の面接と377文書を用い、2005~2015年の気候変動対応の変化を検討。

気候変動戦略事業への翻訳取り組みの後退

Chua, Graaf & Kraus(2026)読了 約9分

管理できるKPIを選ぶと、重要な課題が抜け落ちるのか

現場が改善できるKPIを選ぶことには合理性があります。ただし、その基準で気候変動や地域の課題まで選別すると何が起きるのでしょうか。自治体の指標改訂を追い、管理可能性の意味と測定範囲の変化を考えます。

スウェーデンの自治体が共同で使う業績測定システムの改訂を追う縦断研究。2018–2023年の計79回の聞き取り、約78時間の会議観察・映像、関連資料を分析。

管理可能性KPIの選定社会課題と責任

Cäker, Siverbo & Åkesson(2022)読了 約9分

KPIで評価しながら、現場の改善を支えるには

KPIで評価すると、現場は数字を守ることに追われるのか。環境を含む共通の重点領域、部門に合う指標、会議で使う補助情報を組み合わせた工場から、評価と改善支援を両立する条件を読む。

スウェーデンの多国籍企業の工場を約2年間追った単一事例研究。15回の面接、4日間の観察、社内資料から、KPIをめぐる上司・部下のやりとりを分析。

KPIと評価現場の改善上司と部下の対話

Pfister & Lukka(2019)読了 約9分

高いKPI目標は、社員の工夫を引き出せるか

達成が難しい目標は、社員の創造性を奪うのか、仕事を変えるきっかけになるのか。技術企業の経理部門を追った研究から、高い目標を本人が納得して引き受ける条件と、その限界を考えます。

米国に本社を置く技術企業の経理部門を対象とした質的フィールド研究。2007年、2010–2013年、2016–2017年に計35回の面接を行い、社内資料や訪問時の観察と照合。中心となる分析対象期間は2010–2013年。

目標設定自律的な動機管理の組合せ

Goretzki, Strauss & Wiegmann(2018)読了 約9分

現場のExcelから、全社の管理システムを作り直す

全社の管理システムを整えても、現場のExcelが残るのはなぜでしょうか。財務予測の仕組みを開発した企業の事例から、既存の計算表を比較・説明・交渉に使い、現場の知識を全社システムへ取り込む過程を考えます。

多国籍ソフトウェア企業1社の財務予測システム開発を、2012–2014年の27か月間追った事例研究。本調査の協力者32人への聞き取り、作業や試作品テストの観察、内部資料を分析。

現場の知識全社標準と裁量管理システムの共同設計

Jordan & Messner(2020)読了 約9分

予測を外した人を評価すれば、計画の質は上がるのか

予測が外れるのは、担当者の見通しが甘いからでしょうか。製造業の販売・生産計画を追った研究から、供給制約、売上目標、在庫の配分が予測精度に入り込む仕組みと、数字の評価を共同の学習へつなぐ方法を考えます。

製造企業の事業部を対象とする事例研究。英国の工場・販売拠点を中心に、2009〜2011年に29人へ40回の面談、計画会議7回の観察と資料調査を実施。2014年に追加面談1回。

予測と目標管理可能性部門・企業間の調整

Carlsson-Wall, Goretzki, Kraus & Lind(2021)読了 約9分

KPIを達成している開発案件を、なぜ止めるのか

技術と原価の目標を達成しているのに、開発案件が中止されるのはなぜか。ABBのロボット開発を追った事例から、部門横断の会議が顧客の変化、他案件との関係、採算を束ねて判断する仕組みを考える。

ABBの産業ロボット事業部を対象とした縦断的な事例研究。2002~2005年に収集した35人への49回の面接、22日間の現場滞在・会議参加、開発資料から、相互依存する開発案件の優先順位が変わる過程を分析。

開発案件の優先順位部門間調整KPIと戦略

Ronzani & Gatzweiler(2022)読了 約9分

見やすいダッシュボードが、問い直しを止めるとき

KPIを図にまとめれば、経営会議で伝わりやすくなるのでしょうか。英国の巨大鉄道プロジェクトを追った研究から、可視化が対話を生む場合と、整った見た目が数値や背景への問いを弱める場合を考えます。

英国の鉄道インフラ巨大プロジェクトを対象とする質的事例研究。2017年1月–2018年3月の調査で、30人への42回の面接、30日間の参与観察、実際の図表・報告書・公開資料を分析。

KPIの可視化会議資料数値と説明

Lachmann, Trapp & Wenger(2024)読了 約9分

業績を見えるようにすれば、部門の協力は進むのか

同じ業績情報を見れば、組織全体の目標に向かって動けるのでしょうか。4病院の比較から、数字を提供する側と使う側の認識のずれ、部門の改善と資源の取り合いが同時に進む可能性を読みます。

ドイツの非営利病院4組織を比べる事例研究。経営・管理会計の担当者と、医師・看護職の幹部へ計40回の面談を行い、非公式の討議や社内資料と照合。情報提供の狙いと利用者の認識を分析。

業績情報の透明性部門間の利害評価と資源配分

CEを、開示・KPI・仕事の変化から読む

新しい6本では、企業が何を語り、何を実行し、何を測っているかをたどります。指標を設計することと、実際の改善を確かめることの間に残る課題を考えます。

  1. 25 · 報告書が描くCE「循環型」を掲げた報告書から、仕事の変化はどこまで読み取れるか
  2. 27 · 活動と評価のずれ循環に取り組んでいる。その成果を、何で確かめているか
  3. 26 · 部門のKPIと報酬環境目標を部門の仕事と評価につなぐには
  4. 29 · 戦略と指標のつながりCEのKPIを、経営の判断につながる見取り図にする
  5. 28 · 開示テキストによる測定報告書の文章から、企業のCEへの取り組みを測れるか
  6. 24 · 原単位の読み方原単位が改善したとき、本当に循環は進んだのか

循環を、事業と仕事の仕組みから読む

サーキュラーエコノミー(circular economy:CE)を、資源の再利用だけでなく、組織能力、測定、企業間の役割、事業の不確実性、環境成果から考えます。6本はそれぞれ単独でも読めます。

  1. 18 · CEの実装状況を見渡す企業の「循環への取り組み」は、どこまで仕事に広がっているのか
  2. 19 · 変化を支える組織能力循環型ビジネスを実行できる組織は、何が違うのか
  3. 20 · 環境情報を試行に戻すCEの環境効果を測っても、なぜ事業の設計が変わらないのか
  4. 21 · 企業間で仕事を分担する回収・修理・再利用は、自社で担うべきか、他社と組むべきか
  5. 22 · 不確実性と資金の負担循環型ビジネスは、試行が好評でも、なぜ拡大しにくいのか
  6. 23 · 循環の成果を問い直すリサイクルが増えれば、環境負荷は減るのか

マテリアリティから、KPIと日常業務へ

重要課題を選ぶときの目的や声、指標の選定、現場と作る過程、導入後の運用、組織の変化。6本を順に読み、評価から仕事までのつながりを考えます。

  1. 12 · 重要性を語る目的と関係同じ「重要」という言葉に、どんな目的の違いが含まれているか。
  2. 13 · 重要課題を選ぶ基準と声点数や順位にまとめるとき、誰の意見やどんな違いが省かれているか。
  3. 14 · 関係者から戦略・指標への経路誰の働きかけが、どの経路で環境KPIに反映されているか。
  4. 15 · 現場と測定を作り直す数字が表していない仕事を、現場の知識からどう見つけて直すか。
  5. 16 · 導入後の使われ方と異論改善のための数字が、達成を説明するだけの数字になっていないか。
  6. 17 · 評価から仕事への接続と見直し重要課題の評価は、予算や仕事、KPIを使う会議のどこまで届いたか。

社内浸透を、人から組織へ

個人の理解・動機、職場の関係、戦略への参加、情報・管理の仕組み、人材マネジメント。11本の扱う単位と研究方法の違いに注目しながら読みます。

  1. 01 · 事業と仕事への統合戦略と日常業務の、どちらまで変わっているか。
  2. 02 · 個人の動機・評価・反応誰が、どう受け止め、どのように反応しているか。
  3. 03 · 経験の解釈と仕事の意義同じ方針から、社員はどのような意義や疑問を見いだすか。
  4. 04 · 動機と価値観による違いCSRと仕事への意欲の関係は、どのような条件で変わるか。
  5. 05 · 職場での実践と働きかけ上司の行動と同僚間の情報共有は、個人の実践にどう関わるか。
  6. 06 · 環境戦略への参加現場の経験や懸念は、誰を通じて経営判断に反映されるか。
  7. 07 · 異論と、行動できる余地方針に賛同できないとき、社員が提案や交渉に動けるのはなぜか。
  8. 08 · 矛盾が見える情報の伝え方何を詳しくし、何を整理すれば、判断に必要な対立を捉えられるか。
  9. 09 · 心理と職場・社会の関係個人の態度を捉える研究と、組織を動かす実践の研究をどうつなげるか。
  10. 10 · CSRを支える管理の仕組み目標・手順と人材・文化の、どこまでCSRが反映されているか。
  11. 11 · 研究知見を人材施策へつなぐ期待される効果だけでなく、それを生む仕組みや条件まで伝わっているか。

この解説の読み方

各記事では、原著の論点、研究方法と限界、実務・研究への問いを整理しています。専門用語には英語を添え、「原著を読む順番」から論文の該当箇所へ進めます。

「北田の視点」や「書籍・研究とのつながり」では、実務で確かめたい問いと、書籍『サステナビリティ戦略の実装』(北田皓嗣・安藤光展)の関連章や論点との接点を紹介します。原著の知見と解説者の考察を区別し、書籍の事例を論文の理論の検証結果として扱うことはしません。