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対象論文

Circular Economy Rebound

Zink & Geyer(2017)読了 約10分

リサイクルが増えれば、環境負荷は減るのか

循環量と環境成果の間にある、価格・需要・代替の問題

経済学と先行研究を結びつけた理論・概念研究

リバウンド効果新品生産の代替CEの成果評価
この記事の目次
  1. 回収した分だけ、新品は減っているのか
  2. 企業調査ではなく、環境効果の仕組みを整理した論文
  3. 単位当たりの負荷だけでは、全体の効果は決まらない
  4. 再生品は、新品の代わりになっているか
  5. 価格が変わると、購入量と支出先も変わる
  6. 売上を伸ばす目標と、新品を減らす目標の関係
  7. 「CEは逆効果」と結論づけないために
  8. 原著では、循環の図に加わる「市場」を読む
  9. 自社のCE指標に向ける3つの問い
  10. 書籍・研究とのつながり

まず押さえたいこと

  • 循環量を増やすことと、新品・一次資源の生産を減らすことは同じではない。
  • 環境成果は、再生に伴う負荷と、実際に回避された生産負荷の両方で決まる。
  • リバウンドによって効果が目減りしても、環境改善がすべて失われるとは限らない。
循環による供給再利用・再製造・リサイクルで、材料や製品を供給する。Secondary production
市場での変化品質、価格、顧客の違いが、何を買うかに影響する。Markets and substitution
生産の増減新品・一次資源の生産が、実際にどれだけ変わるかを見る。Primary production displacement
環境負荷の差引再生に伴う負荷と、回避された生産負荷を合わせて評価する。Net environmental impact
新品や一次資源の生産回避を確かめず、循環量をそのまま環境効果へ置き換えない。
原著の理論を基にした整理。実案件では使用段階や対象範囲も含め、比較条件を確認する必要があります。

回収した分だけ、新品は減っているのか

使用済み製品を回収し、修理や再製造を経て再び販売する。廃材を原料として使い、新しい資源の投入を抑える。こうした取り組みは環境によいと感じられます。しかし、再生品を100個売ったとき、新品の生産は100個減るのでしょうか。それとも、一部だけ減るのでしょうか。

この論文が問うのは、循環の活動が、何の生産を、どれだけ置き換えるかです。新品・一次資源の生産を減らすことを、原著ではdisplacementと呼びます。再生材や中古品が供給されるだけでなく、それによって別の生産が減って初めて、期待していた生産負荷の回避が実現します。

資源の流れを示す図に、価格や需要を決める市場を加える。この視点の変更が、論文の出発点です。

企業調査ではなく、環境効果の仕組みを整理した論文

ZinkとGeyerは、エネルギー効率改善のリバウンド研究、リサイクルや再利用の先行研究、経済学的な市場の考え方を結びつけています。新しい企業サーベイや実験を行い、平均的なリバウンドの大きさを推定した論文ではありません。

対象は、製品の再利用、部品の再製造、材料のリサイクルなどです。原著はこれらをまとめてsecondary productionと呼びます。本欄では「再利用・再製造・リサイクルによる供給」と説明します。対になるのは、新品や一次資源による生産です。

論文の貢献は、個別の循環技術が優れているかを判定することより、循環の拡大が期待どおりの環境成果につながらない仕組みを、共通の言葉と枠組みで示したことにあります。企業の成果を評価するとき、暗黙に置いている前提を問い直すための研究です。

単位当たりの負荷だけでは、全体の効果は決まらない

再生品1個を作る負荷が新品より小さいことは、大切な条件です。しかし、再生品を増やした結果、新品がどれだけ減るかによって、全体の環境効果は変わります。原著の式は、追加の再生に伴う負荷と、それによって変わる新品生産の負荷を合計して考えます。

例えば、説明用の仮定として、新品1個の製造負荷を10、再生品1個を3とします。再生品を100個供給した場合は、次のようになります。この数字は原著の実測値ではなく、製造負荷に絞った説明例です。

実際に減る新品再生で追加する負荷新品の回避負荷差引の変化
100個3001,000700減少
60個300600300減少
30個300300変化なし
0個3000300増加

このような効果の目減りを、循環経済のリバウンド(circular economy rebound)として考えます。目減りがあっても、全体では改善する場合があります。改善が打ち消され、取り組みがなかった場合より負荷が増えるバックファイア(backfire)とは区別することが必要です。

再生品は、新品の代わりになっているか

第一の仕組みは、代替可能性(substitutability)が十分でないことです。品質や用途、ブランドの受け止め方、販売先が違えば、再生品と新品は同じ買い物の選択肢にならない場合があります。新品を買う予定がなかった人が中古品を買っても、その販売を新品1個の生産回避と数えることはできません。

原著は、再生材料の品質の違いや、中古製品が新品とは異なる顧客層へ販売される場合を用いて説明します。こうした例は、特定の素材や中古市場が現在も同じ状態だと断定するためではなく、置換が自動ではないことを理解するために読むのが適切です。

ここで確かめたいのは、この再生品がなければ、顧客は何を買っていたかという比較です。中古品によって利用機会が広がる社会的な便益はあり得ます。原著もそれを認めていますが、その便益と、新品生産を回避したことによる環境効果は分けています。

この視点では、同じ用途へ戻す循環が、別の用途へ使う循環より常に環境上優れているとも言えません。原著は先行研究を踏まえ、循環の形そのものより、どの材料の生産を、どれだけ置き換え、その過程にどの程度の負荷がかかるかが重要だと説明します。「同じ製品に戻ったか」だけで評価を終えないということです。

価格が変わると、購入量と支出先も変わる

第二の仕組みは、価格効果(price effects)です。再生材を安く調達できれば、企業はより多くの製品を作れる場合があります。中古品を安く買えれば、消費者は追加の製品を買ったり、浮いたお金を別の商品やサービスに使ったりできます。

支出の節約によって購入の余力が増えることを、所得効果(income effect)と呼びます。また、ある商品の価格が他の商品に比べて下がれば、何を買うかの組み合わせも変わります。再生品自体を安売りしなくても、市場に供給が増えることが、新品を含む価格へ影響する可能性があります。

したがって、技術的な品質を高めるだけで効果が確定するわけではありません。何が代わりに買われるかと、総需要がどう変わるかの両方が問題になります。個社が直接管理しにくい市場全体の反応も含まれるため、環境成果は単純な流量計算だけでは予測できません。

ただし、価格が少し下がれば必ず大量の追加購入が起こる、という意味ではありません。購入者が価格の変化にどれほど反応するかや、すでに需要がどの程度満たされているかによって、結果は異なります。論文はこうした条件を論じますが、各産業の反応の大きさを新たなデータで測定してはいません。

売上を伸ばす目標と、新品を減らす目標の関係

企業には、再生品を新しい市場に売り、既存の新品売上を維持したい動機があります。しかし、環境効果を新品の生産回避として説明するなら、新品を減らさずに売上だけを追加する戦略は、その説明と緊張することがあります。ただし、自社の新品売上が減らなくても、他社の新品生産を置き換える可能性はあります。環境評価では、自社の売上だけでなく、市場全体で何の生産が変わるかを考えます。

原著は、新品の実際の代替になる品質・用途・顧客を意識することや、価格低下で需要が大きく増えにくい領域を考えることを提案します。ただし、企業の努力だけで市場全体の反応を管理できるわけではありません。リバウンドを確実に防ぐ十分条件を導いた研究でもありません。

ここからは、循環量や再生品売上を管理するKPIに加えて、会社が期待する環境効果が、どのような新品・一次資源の生産回避を前提にしているかを確かめる必要性が読み取れます。これは、既存の活動指標を捨てることではなく、その指標で説明できる成果の範囲を明確にするということです。

「CEは逆効果」と結論づけないために

この論文は、循環の環境効果が常に失われると証明した研究ではありません。効果の大きさは、単位当たりの負荷、顧客の選択、価格への反応などによって変わります。提示された仕組みが、自社の事業にどの程度当てはまるかは、別途確かめる必要があります。

また、製造負荷の大きい再使用容器を十分な回数使わず、期待した改善に届かない問題は、原著ではショートフォール(shortfall)として整理されています。利用回数の不足と、需要の増加によるリバウンドを混同しないことも重要です。

原著は環境影響を一つの尺度に単純化しており、複数の環境課題の間の違いや、社会的な便益を総合評価したものではありません。さらに、生産回避量は個社が簡単に正確に測れるとは限りません。比較する状況と、推定の不確かさを明示することが必要になります。

例えば、新品の販売が減った年に再生品の販売が増えていても、景気や製品更新の周期が新品需要を減らした可能性があります。逆に、市場全体が成長していれば、循環による生産回避があっても新品の総量は増え得ます。環境効果の推定には、単純な前年比較に加え、循環の取り組みがなかった場合との比較が必要です。

原著では、循環の図に加わる「市場」を読む

最初に図1を見ると、循環する資源の流れの途中に、材料、部品、製品、中古品などの市場が置かれています。資源の矢印だけでは分からなかった、誰が何を買うかという問題が見える図です。

次に式(1)と式(2)を比べます。すべて同量の新品を置き換える前提を外すと、実際の新品生産の変化を考慮する必要が生まれます。数式の形を覚えるより、「同じだけ置き換わる」という仮定がどこに入っているかを追うと理解しやすくなります。

図2と図3では、単位当たりの負荷と生産量の変化を分け、改善の目減りと負荷の逆増加を区別します。2017年の論文を今読む意味も、個別市場の新しさではなく、この評価の前提を確認できることにあります。

結論の節では、企業にとって魅力的な新規売上の獲得が、環境評価で期待する置換と食い違う可能性が論じられます。ここを読むと、リバウンドが消費者の心掛けだけの問題ではなく、事業の販売先や価格、既存事業との関係にもかかわることが分かります。実務家には、この戦略上の含意まで読むことを勧めます。

自社のCE指標に向ける3つの問い

ここからは、論文の考え方を実務の確認に広げた、本欄からの問いです。

  1. この再生品・再生材がなければ、顧客は何を買っていましたか。 新品、別の再生品、何も買わない場合を区別すると、置換の説明が具体的になります。
  2. 循環量が増えたとき、新品・一次資源の生産はどう変わりましたか。 単なる同時変化を、循環によって減った量と取り違えないよう、比較の前提を確かめます。
  3. 部門の目標と、会社が説明する環境効果は整合していますか。 再生品の売上、新品の売上、回収量をそれぞれ増やすことが、全体の成果にどう関係するかを検討します。

書籍・研究とのつながり

本欄の考察:活動の指標と、成果の説明をつなぐ

回収率や再生材利用率は、循環への取り組みを管理するために役立ちます。その数値を環境成果として説明する段階では、どの範囲で、何の生産を、どれだけ減らす想定なのかを確認したいところです。活動が進んだことと、その結果として負荷が減ったことを分けると、指標に求める役割が明確になります。

社内浸透の観点では、再生品の販売を増やす担当者と、新品の販売を維持する担当者が、それぞれの目標を達成したとき、全体の環境目標にどう近づくかが論点になります。これは本欄の応用的な考察です。指標の値だけでなく、部門間で共有する成果の定義や、目標の関係を研究する入口として、この論文を位置づけられます。

あわせて考える

『サステナビリティ戦略の実装』北田皓嗣・安藤光展

方針を日々の仕事と意思決定につなぐという観点から、書籍とあわせて読むための本欄の考察です。

対象論文

Circular Economy Rebound

Zink, T., & Geyer, R. (2017). Journal of Industrial Ecology, 21(3), 593–602.

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2017年巻号掲載。

原著本文に基づく解説 · 2026年9月10日
応用例・実務への問い・書籍との接点は本欄の考察です。

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