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予測を外した人を評価すれば、計画の質は上がるのか

売上予測の精度を追った事例から、担当者の努力だけでは解けない部門・企業間の問題を読む。

製造企業の事業部を対象とする事例研究。英国の工場・販売拠点を中心に、2009〜2011年に29人へ40回の面談、計画会議7回の観察と資料調査を実施。2014年に追加面談1回。

予測と目標管理可能性部門・企業間の調整
この記事の目次
  1. 売れると言ったのに売れなかった。その責任は誰にあるか
  2. 工場の中と、販売代理店の側から計画を見る
  3. まず、需要の予測と生産できる計画を分けた
  4. 注文が記録される前に、需要が消えてしまう
  5. 目標に届かない予測を、正直に出せるか
  6. 丁寧に予測した相手に、協力の見返りが届かない
  7. 採点を伝える場から、前提を一緒に確かめる場へ
  8. 回収量や再生材の計画へ応用するなら
  9. 原著は、数字の種類と三つの問題から読む
  10. 書籍・研究とのつながり

まず押さえたいこと

  • 予測精度は、担当者が正直に数字を出したかだけでは決まらない。市場の変動、供給能力、代理店内の判断が予測と実績の差に入り込む。
  • 売上目標への約束と、実現しそうな需要の見通しは役割が違う。目標に合う予測を求めると、生産や在庫の判断に必要な情報が届きにくくなる。
  • 精度の採点に加え、過大・過小予測の偏りや前提を相手と確かめる運用が考えられる。ただし、この事例で精度の改善効果まで確認されたわけではない。

売れると言ったのに売れなかった。その責任は誰にあるか

営業の需要予測を受けて部品を買い、生産したのに、注文が来ず在庫が残る。反対に、予測を超える注文へ対応できず、販売機会を失う。予測と実績の差を測り、担当者に改善を求めるのは自然な発想です。しかし、予測の精度をそのまま担当者の仕事の良し悪しとみなしてよいでしょうか。

この論文は、予測精度(forecast accuracy)を管理に使い始めた製造企業を調べています。着目するのは、予測の計算手法よりも、数字を出す人、修正する人、その数字で生産する人の関係です。計画を外さないための指標が、なぜ計画をよくする働きを十分に果たせなかったのかを追います。

重要なのは、担当者の努力で動かせる範囲(controllability)と、指標を改善する行動が組織の目的にかなうか(goal congruence)です。計算式が正しくても、この二つが自動的に満たされるわけではありません。

工場の中と、販売代理店の側から計画を見る

対象は、技術集約的な製品を扱う米国企業の事業部PowerCoです。名前は仮名で、研究者は英国の工場と欧州・中東・アフリカ向けの販売拠点を中心に調査しました。製品には大型で個別仕様の多いものと、小型で標準化されたものがあり、代理店経由の販売が重要でした。

2009年1月から2011年8月までに29人へ40回の面談を行い、2014年12月に追加面談を1回実施しています。財務、需要計画、生産、営業の担当者に加え、代理店4社の販売責任者にも話を聞きました。計画に関する経営会議7回を観察し、会議資料なども分析しています。

同じ指標への不満を複数の立場から読む点が、この設計の強みです。工場からは営業の予測が問題に見えても、代理店からは供給の約束が守られないことが問題に見えます。研究者は、その食い違いが生まれる仕事のつながりを調べました。

まず、需要の予測と生産できる計画を分けた

PowerCoは、販売、技術、生産、購買が毎月集まり、先の24か月を見通す計画の仕組みを導入しました。代理店が需要を予測し、営業側が集計・修正したうえで、生産能力や材料の入手可能性と照らし合わせます。最終的に承認された数字が、生産の判断に使われます。

ここには二種類の数字があります。一つは、供給できるかをいったん脇に置いた需要予測(unconstrained forecast)。もう一つは、生産・調達の制約を反映した計画(constrained forecast)です。工場の計画精度は後者で測り、代理店の精度には顧客の希望納期に基づく受注を使い、供給側の遅れをできるだけ混ぜないようにしました。

計画全体を支える複数の指標の一つとして予測精度を位置づけ、担当者や改善チームも決めました。ところが、コンサルタントが示した95%という精度目標には届かず、なぜ数字が変動するかを説明することも容易ではありませんでした。

注文が記録される前に、需要が消えてしまう

予測を難しくしたのは、政情の変化や突然の税制変更だけではありません。代理店の営業が販売を見込んでも、同じ代理店の財務部門が在庫資金を認めず、発注数量を減らす場合がありました。予測を担当する人が、注文の最終判断まで握っているとは限らないのです。

さらに、顧客が納期を問い合わせ、間に合わないと分かった時点で注文を諦めることがありました。その需要は受注記録に残りません。代理店が需要を見通していても、記録された受注と比べれば、予測しすぎたように見えます。受注実績を使っても、供給制約の影響を完全には除けませんでした。

この場面が示すのは、予測と比べる「実績」も、組織の行動によって作られるということです。精度が低い理由を聞く際には、見通しを誤ったのか、見通していた需要を実現できなかったのかを分ける必要があります。

目標に届かない予測を、正直に出せるか

もう一つの問題は、売上目標との関係でした。代理店の年間目標は契約更新にも関わり、営業担当者は年間の売上や利益で評価されます。一方、工場は月ごとの需要の波と在庫に対応しなければなりません。年間売上を達成しても、月ごとの納入が大きくずれれば生産と在庫の負担が生じます。

工場側からは、実際の見通しが年間目標を下回っていても、営業が目標に合わせた予測を出してしまうという指摘がありました。目標への意欲を疑われたくないために、現実的な見通しが言いにくくなるのです。

著者らは、正しい情報を出すよう促す指標(truth-inducing indicator)という考え方を問い直します。低い精度が、情報を隠す意図から生じる場合もあるでしょう。しかし、この事例では、別の目標への強い責任感も数字をゆがめていました。予測を正直に出すことと、目標達成への努力を弱めることを混同しない運用が課題になります。

丁寧に予測した相手に、協力の見返りが届かない

代理店にとって、予測に時間を使う利点は、欲しい製品を必要な時期に受け取れることでした。しかし、正確に予測しても納期が改善するとは示せませんでした。供給能力に加え、用意した製品を誰へ配分するかという社内のルールが関わっていたからです。

会社は地域などで顧客を区分し、予測と注文を対応させようとしていました。ところが、ある顧客群の予測をもとに用意した製品を、別の顧客群の注文へ回す運用が行われていました。全体として注文を満たしやすい一方、正確な予測を出した小規模な代理店が、先に確定注文できる大きな代理店に後れを取る問題がありました。

単純に予測した相手を優先すれば、全体の在庫活用や顧客対応を損なう可能性もあります。したがって、精度への意欲を高めることと、供給網全体をうまく動かすことの間には、配分ルールまで含む調整が必要でした。

採点を伝える場から、前提を一緒に確かめる場へ

会社は次第に、精度の結果だけを伝える運用を見直しました。過大予測と過小予測のどちらが続いているかを示すと、担当者は自分の見積もりの偏りを理解しやすくなります。また、代理店の管理者だけでなく、実際に元データを作る販売担当者にも、入力が生産計画へつながる仕組みを説明しました。

需要計画の担当者は、予測を受け取って追加情報を求めるやり方から、代理店と数字の前提を一緒に話し合うやり方へ移ったと説明しています。会話の結果、特定製品の見通しを再検討し、情報を追加して数字を提出し直すこともありました。

予測精度は、相手が正直かどうかを遠くから採点する指標から、共同で計画を作る際の手掛かりへ役割を広げたと読めます。ただし、この変化は調査期間の終盤であり、精度が持続的に改善したかは確認されていません。

回収量や再生材の計画へ応用するなら

ここからはサステナビリティ実務への応用です。使用済み製品の回収量を予測したのに再資源化できなかった場合、回収担当者の見通しだけでなく、物流の手配、選別能力、受け入れ条件を調べる必要があります。再生材を増やす目標と、調達できそうな量の見通しも、分けて扱う方が判断しやすくなります。

予測と実績を比較する会議では、「予測時点で何が分かっていたか」「どこで条件が変わったか」「次に誰と何を確認するか」を残せます。数値を改善する責任と、その数値を実現できる仕事の条件を整える責任を、一緒に検討するためです。

原著は通常の製造・販売計画の研究で、回収や資源循環の成果を調べたものではありません。この応用は、原著が示した相互依存の問題から本記事が導く問いです。

原著は、数字の種類と三つの問題から読む

最初に第4節で対象と方法を押さえ、第5.1節と図1で、工場の計画精度と代理店の需要予測精度の違いを確認します。続く第5.2節は、担当者が動かせる範囲、他の目標との衝突、会社の対応という順で読むと、計算の問題と仕事の関係の問題を分けられます。

その後、第6.2節を読むと、なぜ著者らが「正直な情報を引き出す」という説明だけでは足りないと考えるかが分かります。この研究は一つの事業部の分析であり、予測精度の指標を使わない方がよいと証明したものでもありません。指標を有効にする条件を具体的に考える論文として読めます。

書籍・研究とのつながり

『サステナビリティ戦略の実装』との接点は、方針への賛同を、実際に仕事を動かす情報へ結びつけるところにあります。本記事の考察として、目標達成への意欲が高くても、不都合な見通しを伝えにくい評価の仕組みがあれば、実装に必要な調整が遅れる可能性を考えられます。

在庫・資源効率の研究へ広げるなら、予測誤差と在庫量の関係だけでなく、供給制約を誰が把握し、いつ予測を修正し、どの部門が在庫の負担を引き受けたかを追うことができます。誤差を担当者の属性へすぐ結びつけず、情報と責任が部門・企業の間をどう通るかを見るための論文です。

あわせて考える

『サステナビリティ戦略の実装』北田皓嗣・安藤光展

方針を日々の仕事と意思決定につなぐという観点から、書籍とあわせて読むための本欄の考察です。

対象論文

The Use of Forecast Accuracy Indicators to Improve Planning Quality: Insights from a Case Study

Jordan, S., & Messner, M. (2020). The Use of Forecast Accuracy Indicators to Improve Planning Quality: Insights from a Case Study. European Accounting Review, 29(2), 337–359. https://doi.org/10.1080/09638180.2019.1577150

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原著本文に基づく解説 · 2026年9月13日
応用例・実務への問い・書籍との接点は本欄の考察です。

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