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企業の「循環への取り組み」は、どこまで仕事に広がっているのか

開始時期・規模・広がりを分けて、CEの実施状況を捉える

大企業の上級管理職から2,950回答を得た国際質問票調査

循環戦略(circular strategies)組織的実装(organizational implementation)指標と評価(measurement)
この記事の目次
  1. 「CEに取り組んでいる」だけでは分からないこと
  2. 誰に、どの仕事について尋ねたのか
  3. 「いつから」「どの規模で」「どこまで」を分けて聞く
  4. 全体では、省資源とリサイクルが先行していた
  5. どの仕事を見るかで、先行する取り組みも違う
  6. 早く始めることと、大きく広げることは別の課題
  7. この論文が示すのは、活動の状態と残された問い
  8. 原著は「質問」「比較」「解釈」の順に読む
  9. 自社のCEを確かめる三つの問い
  10. 書籍・研究とのつながり

まず押さえたいこと

  • 再資源化と資源効率の改善が先行していたが、操業・調達・製品では進み方が異なった。
  • 始めた時期、取り組みの規模、組織内の広がりは別の側面であり、早い着手が広い実装を意味するとは限らない。
  • 調査が示すのは管理職が把握する実施状況。実際の資源削減や環境成果とは区別して読む必要がある。
資源使用を抑える少ない材料やエネルギーで、必要な機能を提供する。Narrow
長く使う保守・修理・再使用等により、製品や部品の使用期間を延ばす。Slow
資源として循環させる使用済みの材料を回収し、再び材料として使う。Close
自然環境の回復を支える自然環境を改善する方向へ事業を変える。Regenerate
操業・サプライチェーン・製品/サービスごとに、開始時期・規模・広がりを確かめる。
原著の比較枠組みをもとに本欄で整理。実際の質問項目が各戦略のどの部分を測っているかも確認する必要があります。

「CEに取り組んでいる」だけでは分からないこと

再生材を採用した製品がある。工場で廃棄物をリサイクルしている。修理サービスを始めた。どれもCEの取り組みですが、一つの製品で試している段階と、主要な事業全体へ広がった段階では、会社の仕事の変わり方が違います。

この論文は、大企業はどの循環戦略を、どの領域で、どの程度実施しているのかを問います。資源の使用を抑える(narrow)、製品・部品を長く使う(slow)、材料を再資源化する(close)、自然環境の回復を支える(regenerate)という四つの戦略を比較しました。

読む際に役立つのは、企業を一つの点数で評価する前に、「何を変える戦略か」と「どこまで仕事に広がったか」を分ける視点です。CEの社内浸透やKPIを考える場合にも、この区別は出発点になります。

誰に、どの仕事について尋ねたのか

この調査では、大企業の管理職に、自社の循環型の取り組みがどこまで進んでいるかを尋ねました。ただし、一人の管理職が会社のあらゆる活動を詳しく知っているとは限りません。そこで、まず次の三つから自分が最もよく把握している範囲を一つ選び、その範囲について答える方式にしています。

  • 自社の事業活動(operations):自社が管理する工場、物流、オフィスなどの活動。1,072回答。
  • 仕入先などの活動(supply chain):仕入先やその先の取引先などが担う活動。927回答。
  • 顧客に提供する製品・サービス(products and services):製品を長く使える設計や、修理サービスなど、顧客の使い方に関わる取り組み。951回答。

例えば、自社工場の活動をよく知る管理職なら、工場での省エネルギー、設備を長く使う工夫、廃棄物のリサイクル、再生可能エネルギーの利用などについて答えます。一つの取り組みを選ぶのではなく、選んだ仕事の範囲で、四種類の取り組みをそれぞれ評価します。

研究者は、このように集めた回答を三つの範囲ごとにまとめ、どの取り組みが先行しているかを比較しました。つまり、多くの企業の活動について、工場やオフィス、仕入先、製品・サービスという切り口で傾向を見ています。一社の工場担当者・調達担当者・製品担当者をそろえて、その会社の部署間の違いを比較した調査ではありません。

調査は2023年初めにOxford Economicsが実施し、年商3億5,000万米ドル以上の企業に属する管理職から、計2,950回答を得ました。

「いつから」「どの規模で」「どこまで」を分けて聞く

例えば、ある会社が「リサイクルに取り組んでいる」と答えたとします。それだけでは、以前から続けているのか、一部で試しているのか、全社に広がっているのかが分かりません。この研究では、取り組みの状態を三つに分けて尋ねました。

質問何を知るためか
いつ始めたか
開始時期(start date)
以前から実施しているのか、最近始めたのか、これからの計画なのか。
どの程度の規模か
実施規模(size)
小規模な取り組みなのか、会社にとって主要な取り組みなのか。
どこまで広がったか
部署への広がり(spread)
一つの部署だけか、複数の部署か、全社で行っているのか。

「規模」と「広がり」は似ていますが、見るものが違います。例えば、一つの工場で大規模な回収設備を導入する場合と、全事業所で小規模な回収活動を行う場合では、取り組みの大きさと、実施する場所の広さは一致しません。この例は、その区別を説明するためのものです。

規模と広がりを尋ねたのは、すでに始めている取り組みについてです。また、ここでの規模は管理職の評価であり、投資額や資源削減量を測った数値ではありません。

全体では、省資源とリサイクルが先行していた

全体の傾向として、早くから取り組まれていたのは、少ない資源やエネルギーで仕事を行う効率改善と、材料を再び使うリサイクルでした。製品・部品を長く使う取り組みや、自然環境の回復を目指す取り組みは、相対的に着手が遅い傾向にありました。

ここでいう「先行している」は、取り組みを始めた時期や、規模、部署への広がりについての評価です。リサイクルが最も大きな環境改善を生んだ、という意味ではありません。

著者らは、省資源やリサイクルには費用削減や材料効率の改善と結びつけやすい活動があり、企業が着手しやすいのではないかと解釈しています。一方、製品を長く使ってもらう事業では、販売の仕方や顧客との関係まで変える必要が生じます。こうした違いが、取り組みの進み方を考える手掛かりになります。何が導入を促したのかを直接検証した結果ではなく、著者らによる説明として読む箇所です。

どの仕事を見るかで、先行する取り組みも違う

全体の傾向を、先ほどの三つの範囲に分けると、もう少し具体的に読めます。

自社の工場やオフィスなどでは、省エネルギー等の効率改善が先行していました。 他の取り組みより早く始まり、部署への広がりも大きいという結果です。

仕入先などの活動では、資源使用を抑えた製品などを調達する取り組みが先行していました。 一方、すでに始めた活動の規模を見ると、再生材などを調達する取り組みは、省資源や自然環境の回復に関する取り組みより大きく評価されていました。

顧客に提供する製品・サービスでは、再生材を使う、リサイクルしやすくするといった取り組みが先行していました。 ただし、この範囲では四種類の取り組みの規模に、統計的に明確な差は確認されませんでした。再資源化があらゆる面で最も進んでいる、という結果ではありません。

実務に引きつけると、会社が「CEは進んでいます」と説明するとき、工場での省エネを指すのか、仕入先を含めた資源利用を指すのか、顧客が製品を長く使えることを指すのかを確かめる必要があります。同じ言葉でも、見ている仕事によって実態が異なるからです。

早く始めることと、大きく広げることは別の課題

この研究のもう一つの読みどころは、着手の早さだけで取り組みを評価していない点です。例えば、製品や設備を長く使う取り組みは、全体では着手が遅めでしたが、自社の事業活動で実施済みのものに限ると、規模が大きい傾向が見られました。

この違いは、「始めているか」と「始めた後、どの程度取り組んでいるか」を分ける意味を示します。長く続いていても一部にとどまる活動と、始めた時期は遅くても主要な取り組みになっている活動では、次に考える課題が異なります。

ここから実務への問いとして考えられるのは、開始を後押しする条件と、事業や部署へ広げる条件は同じだろうか、ということです。試行を始める予算は確保できても、通常業務の担当や評価に組み込めなければ、全社展開にはつながらないかもしれません。これは調査の結果を、社内浸透の問題へつなげて考えるための視点です。

この論文が示すのは、活動の状態と残された問い

この研究は、CEを「導入したかどうか」だけで捉えず、活動の種類と進み方を分けて見渡せる点に価値があります。そのうえで、結果を使う際には、次の三点を押さえておくとよいでしょう。

  • 活動の広がりと、環境改善の大きさは別です。 調べたのは管理職が把握する実施状況であり、資源投入量や廃棄物が実際にどれだけ減ったかではありません。
  • 戦略の名前より、実際の質問内容を確認します。 例えば「自然環境の回復(regenerate)」について、自社の事業活動では再生可能エネルギー等の利用を尋ねています。この回答から、生態系がどれだけ回復したかまでは分かりません。
  • 取り組みが広がる過程は、別に調べる必要があります。 一時点の回答を集めた調査なので、予算、部門間の調整、評価制度が実装をどう左右したかは直接追っていません。

対象地域は欧米などが中心で、日本は含まれていません。結果を自社に当てはめる際には、業種や事業の条件の違いも考える必要があります。また、図の平均値に差があっても、統計的に明確な差が確認されていない比較があります。例えば、仕入先などの活動では、四種類の取り組みの部署への広がりに明確な差はありませんでした。

原著は「質問」「比較」「解釈」の順に読む

まずMethodとAppendix Bで、三つの仕事の範囲と、それぞれについて尋ねた具体的な活動を確認します。例えば「長寿命化」が、自社の設備を長く使う話なのか、顧客に提供する製品を長く使ってもらう話なのかを区別すると、結果を読みやすくなります。

次にFigure 1で、開始時期、規模、部署への広がりを一つずつ見ます。自分の関心に近い仕事の範囲を選び、その中で四種類の取り組みを比べてみてください。Table 1には回答数が載っているので、規模と広がりの集計が、実施済みの活動に限られていることも確認できます。

さらに詳しく読む場合は、Tables 2–3で、どの比較に明確な差があったかを確かめます。最後にDiscussionを読むと、著者らが結果をどう説明し、どのような追加研究を必要と考えているかを追えます。Figure 4の総合的な順位は、その後に全体を見渡すために使うと理解しやすいでしょう。

自社のCEを確かめる三つの問い

  1. 「CEが進んだ」と言うとき、どの仕事が変わりましたか。 自社の工場やオフィス、仕入先、顧客に提供する製品・サービスを分けて確認します。
  2. いつ始めて、どの規模で、どこまで広がっていますか。 取り組みがあることに加えて、主要な活動になっているか、複数の部署で行われているかを確かめます。
  3. 活動が広がった結果、何が改善しましたか。 実施する部署数などの活動指標と、資源投入量や廃棄物などの成果指標を分けて追います。

書籍・研究とのつながり

CEの方針を、部門の仕事と成果指標に分けて確かめる

この研究は、「CEに取り組む企業か」という二択から、どの領域の仕事が、どのくらい変わったかへ問いを具体化する材料になります。社内浸透を検討する際も、方針への理解、活動の開始、実施の広がり、成果を区別すれば、次に確かめるべき点を絞りやすくなります。

新たな企業調査では、複数部門への聞き取りと、KPIや実際の物量データを組み合わせる方法が考えられます。活動は広がっているが資源投入の総量は減っていない場合と、投入量は減ったが事業縮小の影響が大きい場合では、解釈が異なります。ここは原著の実施状況の比較を、資源効率や環境成果の研究へ発展させるための問いです。

あわせて考える

『サステナビリティ戦略の実装』北田皓嗣・安藤光展

方針を日々の仕事と意思決定につなぐという観点から、書籍とあわせて読むための本欄の考察です。

対象論文

How circular are large corporations? Evidence from a large-scale survey with senior leaders

Bocken, N. M. P., Kimpimäki, J.-P., Ritala, P., & Konietzko, J. (2025). Resources, Conservation and Recycling, 215, 108151.

原著の掲載ページを開く ↗

2025年掲載。調査の実施時期は2023年初めです。

原著本文に基づく解説 · 2026年9月10日
応用例・実務への問い・書籍との接点は本欄の考察です。

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